「ギターの弦はゆるめたほうがいい」の本質を考える

ギターやベースの弦はゆるめたほうがいい
弦をゆるめずしばらく触らなかったらネックが反った

なんて話をききます。

ネット上にもこの手の記事は山ほどあるし
生徒さんにもね、聞かれたりするんですよ。

僕なりの答えとしては

はゆるめなくていいです。

ただし!!
注釈がつきます(笑)

詳しく解説します。

そもそもの話

ギターやベースは、ネックに弦を張っている楽器です。

張っている弦の多くはスチール弦なので(クラシックは違う)
金属の繊維みたいなものです。

これを張ることで細いネックには
数10kgの負荷が常にかかっていることになります。

例えばマンション。

高層になればなるほど1階にかかる負荷は増大します。
だからといって1階には住まないでください!ってなりますか?

ならんよね。

重量に耐えきれず押しつぶされる恐れがあるのに
1階の部屋を販売する業者はいないはずです。

マンションの1階は
上層階の重量に耐えられる設計をされています。

マンションの構造

じゃギターのネックは?

最初からスチール弦を張ることを想定して、強度が計算されているはずですよね?

ギター職人の想定を超えるもの、

例えば
「ペグ・ポストを改造して弦が何本も張れるようにした」または
「極太の弦を張れるようにした」

とかじゃないかぎり
弦の張力にネックが負けるなんてことは考えにくいと思われます。

マンション同様
ネックは、スチール弦の張力に耐えられる設計です。

なぜゆるめるという話が出るのか

冒頭にも書いたとおり

「弦はゆるめたほうがいい」だの
「弦をゆるめなかったらネックが反る」だの

色々言われています。

アコギの場合は「トップ浮き」といって
弦の張ってある側のボディ(トップ材)が浮いてくることがあります。

アコギのトップ浮き

ネックの反りやトップ浮きはプレイに影響するので
当然、修理・調整が必要となってきますよね。

ギタリストやベーシストからしたら
非常に困るんです。

だから、なるべくネックの反りやトップ浮きは無くしたい。

「わー、ネックが反ってる!なんで反ったんだ?」

「弦が常に引っ張っているから、張力に負けたのかも?」

となるわけです。

自分にとって都合の悪い現象に対して
わかりやすい解答がほしい。

でもね、

本当に弦の張力だけのせいですか?

って話です。

材質の問題

ギターには色々種類があります。
詳しくはこちらで。
ギターの種類一覧 ~わかりやすい見分け方・特徴~

色々種類があると言っても
基本的には大部分が「木材」でできています。

ここが重要です。

木は元々沢山の水分を含んでいるので
組み上げる前に、シーズニングといってある程度の期間(数年)、材自体を自然乾燥させます。

それでも木である以上、完全に乾ききることはありません。

そしてギターとして組み上げて製品化されるわけですが
日々、湿気と気温の変化にさらされています。

ネックの反りなんかはモロにこの影響です。

おまけに人によっては壁に立てかけていたり
よりかかるタイプのスタンドに立てていたり、と

ネックに負荷がかかるような保管の仕方をしているわけです。

そりゃ反るわ(笑)

ネックが反る原因のほとんどが
湿度と気温の変化そして、物理的な負荷(ネックだけで寄りかかる)です。

こちらも参考に。
ネックの反りと気温・湿度の影響

弦の張力も物理的な負荷ですが、影響はそれほどではないでしょう。

ゆるめるとき、ゆるめないとき

では、どういう状態で「ゆるめる・ゆるめない」が分かれるのか?

  • ネックが極端に反ったり波打ったりしておらず、
  • 気温と湿度を適正に管理でき、
  • ケースに入れるなどのネックに直接負荷をかけないように保管している

などの場合は弦はゆるめる必要はないでしょう。

逆に、

  • ネックの状態があまり良くなく(反り・波打ち)、
  • 湿度も気温も気にしないし、
  • ネックが直接当たるスタンドや、壁に立てかけることが多い

などの場合は弦をゆるめたほうがいいです。

ただし、注意点が一つ。

弦をゆるめるということは、張力が減るということ。
つまりバック側にネックが戻りやすく(反りやすく)なるということです。

図でいうと黄色の矢印方向。

弦の張力とネックの反り方向

元々、緑矢印方向に反りぎみ
または、立てかけなどで緑矢印方向に負荷がかかっている

この場合なら、弦をゆるめることでバランスがとれるかもしれません。

でも、反対に
黄色矢印方向に反っている・負荷がかかっている
という状態で弦をゆるめても症状が悪化するだけです。

最後に

ネット上には様々な情報記事があふれています。

まぁ、この記事も含めてね(笑)

ネットの内容を鵜呑みせず、自分で検証するのが一番です。

弦をゆるめたほうがいいのか、ゆるめないほうがいいのか。
迷うんだったら、自分で試してみればいいだけのこと。

ネックの状態を見極めて、
湿度も気温も管理して、
負荷のかからない保管をして、

つまり、弦をゆるめる以外のネック反りの原因を排除して

弦をゆるめたときにどうなるか?
を観察するんですよ。

自分で試してみて
やったほうがいいと思うならやる。
やらないほうがいいと思うならやらない。

こういう単純なことができない人が意外と多いんですよね。

練習方法などでもそうですが
結局、自分の感覚が大事だったりします。

自分が納得できるもの
自分がしっくりくるもの
を選択していきたいものです★

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