世の中には講師のように、誰かにむかって何かを施す仕事の人がいます。
レッスンをする、施術をする、カウンセリング、治療、など。
そして、施す側の一つの指標として「何人の顧客・患者を対応した」という数字が注目されがちです。
音楽講師の中にも、僕が知る限りでは「教えた人数、のべ3000人」とか豪語する方もいらっしゃいます。
これに騙されてはいけません(笑)
教えた人数が嘘だという意味ではありませんよ。
ただ、人数多い=優れた講師 ではないんです。
講師の質は教えた人数ではなく、継続率だからです。
継続率が良ければ教えられる生徒の数はあまり伸びません。
逆に継続率が悪ければ、教える人数はどんどん伸ばしていくことが可能です。
詳しくみていきましょう。
フルタイムはしんどい
まず、世の中の大半の方には申し訳ない話なんですが
8時間レッスンする講師は少数派です。
なぜなら、めちゃくちゃシンドイから。
楽器のレッスンである以上、大半を音に集中します。
楽器の音なり、生徒さんとの会話なり。
んで、8時間ものあいだ音に集中するって苦行なんですよ。
しかもレッスン中ってあんまり身体動かさんでしょ。
僕は、現場で怒号が飛び交うようなバリッバリの肉体労働に、数年従事したことがあります。
こう見えて体育会系なんだよ(笑)
その僕が「8時間レッスンはシンドイ」と言うとるわけです。
僕だけでなく、他の講師の方も同意見です。
大手の教室に所属しているときは「4、5時間が限界だよね」みたいな話を
他の講師とよくしていました。
ということで、まず8時間レッスンをすることはなかなか無いという仮定をします。
月に何人教えられるか
一日に8時間レッスンはないだろう、をふまえて5時間と仮定しましょう。
さらにいくつか仮定がいります。
まず、わかりやすく1コマ1時間レッスンとします。
30分とか45分とかの教室も多いですが。
続いて、グループレッスンではなくマンツーマンレッスンとします。
よって1コマ一人、となります。
そして、20日間稼働するとします。
ということは
5時間×20日で100時間
レッスン回数は月1回や月3回などまちまちですが、平均して月2回だとすると
100時間÷2回で50時間
つまり月に50人対応できることになります。
年に何人教えられるか
月に50人だとして、年に何人になるか。
50人×12ヶ月で600人でしょ、ってなるのは早計です。
なぜならこの計算だと毎月毎月生徒が50人ごっそり入れ替わることになるからです。
数回で辞めたり、半年くらいで辞めたり。
何年も継続する人もいます。
計算がややこしくなるので、全員一年きっかり継続、と仮定します。
となると50人が一年継続するので、教えられる人数はそのまま年間50人となります。
キャリアを積んだら
月に50人だとして、その生徒が一年継続するとしたら年に50人。
年に一回、50人入れ替わるとして(そんなことはないけど)
10年で500人、20年で1000人、30年で1500人。
そんなもんですよ。
1年継続で見積もったとしても30年かかってやっと1500人。
3000人に到達するには、60分レッスンと仮定したところを30分レッスンにするか。
または一年継続を半年にするか。
ということは3000人とか言ってる講師は30分レッスンをバンバンこなしているか、継続率が半年とかそれ以下。
前向きに考えるなら、グループレッスンで1時間あたり数人ずつ教えているかも。
しかし、グループレッスンを毎日5時間なんて
よほどの大手で生徒がめちゃくちゃ多くない限り無理です。
数千人に教えられるということは、継続率が悪いと考えざるをえません。
なぜ人数を公表するのか
なぜレッスンで対応した人数を公表するんでしょう?
答えは単純、
凄そうに見えるから
です(笑)
そしてそれに騙されるというか、ひっかかる人も多いから。
スポーツとかね、なにか競争するものだったらわかるんですよ。
「何人倒した」とか
「何人の記録を抜いた」とかね。
あと凄腕の外科医とか。
「何人の手術をした」と。
同じ患者さんに手術することのほうが少ないだろうから、人数は伸びていきますよ。
これは素晴らしいことです。
でも講師業ってそういう世界じゃないでしょ。
競っているわけじゃないし、同じ生徒さんに何度も教えるわけだし。
なんでそんなに人数が伸びていくねん、って話です。
人に教えるのは難しい
なんでもそうですが、人に教えることってめちゃくちゃ難しいんですよ。
(演奏技術の体系化は無理 ~教えることの難しさ~)
「伝える」ことは簡単です。
でも教えるというのは理解させることです。
だから1対1でも難しい。
これが僕がグループレッスンをやらない理由です。
一人一人に対してしっかり向き合って指導・施術をするなら
人数はそこまで伸びません。
いい指導者・施術者なら必ずリピーターがいるからです。
のべ人数を誇っているような指導者・施術者はあまり信用せず
対応の中身と業態をしっかり見るようにしましょう。
僕ですか?
もちろん、のべ人数は多くないよ(笑)
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