魂のギタリスト
Stevie Ray Vaughan(スティーヴィー・レイ・ヴォーン)の紹介です。
まるで命を削っているかのような、鬼気せまるプレイ。
情熱的で繊細で。
泥臭くて、それでいて圧倒的な技術力。
速弾き全盛期の80年代に、ブルースを復活させたと言ってもいいでしょう。
一聴すればそのサウンドに魂を揺さぶられます。
早世した天才の生涯や特徴を解説します。
生い立ち
レイ・ヴォーンは1954年
アメリカ、テキサス州ダラスに生まれています。
以前紹介したEric Johnsonもテキサス出身ですね。
(魅惑のギタリスト ~Eric Johnson編~ )
この二人は親交があり、エリックの「S.R.V」という曲はレイ・ヴォーンに捧げられた曲です。
レイ・ヴォーンは兄の影響で、様々な楽器に触れ、7才のときにギターを手にしています。
そしてAlbert King(アルバート・キング)、Muddy Waters(マディ・ウォーターズ)、Jimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)など数々のブルースミュージシャンを聴きあさり、腕を磨いたそうで。
7才からそんな大御所を聴くあたり、やはり大成する人は違います(笑)
そして、わずか10代でプロになり地元のバーやクラブで演奏に明け暮れます。
拠点をテキサス州オースティンへと移し、Buddy Guy(バディ・ガイ)、Lightnin’ Hopkins(ライトニン・ホプキンス)、前出のアルバート・キングらと共演。
もう、ブルース好きなら腰ぬかすほどのメンツです。
そして、レイ・ヴォーンのあまりの腕前に、アルバート・キングは“死ぬほど怖がった”とか。
レイ・ヴォーンはこのアルバート・キングからかなり影響を受けているようですね。
得意なフレーズとかけっこう似ている気がします。
アルバートもレイ・ヴォーンの腕をずいぶん買っていたようで。
「前へ前へと進め。腕が上がるほど大変になるんだ」と言っています。
レベルが上がれば上がるほど油断するなよ、ということなんでしょう。
僕も肝に銘じておきます(笑)
1982年のモントルージャズフェスティバルへの出演を機に知名度が上がり
アルバム「Texas Flood」でデビュー。
僕のお気に入りのアルバムの一つです。
もう、何度聴いたことか。
一時、ドラッグやアルコールの依存症で苦しむも、見事に克服し復活します。
Jeff Beckと全米ツアーをまわるなど精力的に活動。
(魅惑のギタリスト ~Jeff Beck編~)
その後も活躍を続け
1990年にウィスコンシン州で開催されたブルースフェスティバルに参加。
この時共演したEric Clapton(エリック・クラプトン)は
レイ・ヴォーンの演奏を見て絶句したと伝えられています。
アルバート・キングを怖れさせ、クラプトンを絶句させたレイ・ヴォーン。
これだけでも彼の凄さがわかるでしょう。
しかし、このブルースフェスティバルが終了した晩に
搭乗したヘリコプターが墜落。
レイ・ヴォーンは帰らぬ人となってしまいます。
享年35。
彼の訃報にふれ、ブルースギタリストの大御所B.B.King(B.B.キング)は
「肌の色が違っても、あいつは私の息子だった」と号泣したそうで。
また、同じくブルースギタリストの大御所John Lee Hooker(ジョン・リー・フッカー)は
「スティーヴィーのソロを聴け。あの小僧だけは本物だ」という言葉を残しています。
数々の天才ギタリストたちをも魅了した、まさに真の天才ギタリストでした。
サウンド・機材
レイ・ヴォーンは演奏技術の凄さもあるのですが、そのスタイルの特異さも目を引きます。
まずギターに張ってある弦。
「.013、.015、.019、.028、.038、.058」
という変則ゲージ。
弾きたくねーよ、こんな太い弦(笑)
弦高は弦によっては3mmほどあったそうで。
アコギじゃないんだから・・・
普通の人にはまともな演奏ができないほどのギターコンディションです。
こうなるとね、ギターの最適な調整ってなんだろうと思うんですよ。
また、ピックはティアドロップ型を使っていますが、通常の一番尖った部分ではなく反対の丸い部分を使っています。
レイ・ヴォーンサウンドの特徴は、極太の弦ならではの張りやコシ。
それでいてブライトさというか、音が決してこもっていないんですね。
もちろんアンプのセッティングにもよるんでしょうけど。
このブライトさの要因の一つが、ピックの持ち方だと僕は考えます。
通常、丸い部分を使うと弦への接地面積が広くなるため音は丸くこもりがちになります。
尖った部分を使ったほうがブライトになる“はず”なんですよ。
ところが丸い部分でブライトさもあるサウンド。
なぜか?
この丸い部分は接地面積が広くなるため
弦に当たる深さを極限まで浅くしているのではないかと。
尖った部分で弾くよりも更に浅く。
そうすると音はブライトになりますね。
実際、僕も丸い部分で色々と試しました。
ちょっとでも深く当たるとやはり音が丸くこもってしまうんですが、徐々にピックを浅く当てていくとある点を境にブライトさが出るようになります。
しかし、その状態をキープしていい演奏をするのは難しいです。
普段から、ピックの当て方の意識と訓練が必要になります。
そしてやはり脱力ですね。
パワフルな演奏ですが、決してパワーでゴリゴリいくタイプではありません。
リハーサルの映像を見たことがありますが、かなり繊細なタッチです。
ピックを浅く当て、そして脱力するということは
結局のところピッキングの◯◯がキモだということです。(レッスンでは教えています)
もう一つ、ブライトさを出すのに貢献しているのがネックでしょう。
指板をネックに貼る方法としてスラブボード(指板とネックの接着面が平ら)とラウンドボード(指板とネックの接着面がカーブしている)とありますが、
ラウンドボードのネックを使用していたため、スラブボードのネックに比べて、やや軽やかで抜けの良いサウンドになります。
使用ギターはFender社のストラトキャスター。
トレードマークとも言える「#1(ナンバーワン)」と名付けられた、ボディの塗装がボロボロのギターです。
自身の名前「SRV」が印字されていますね。(大きい印字バージョンと小さい印字バージョンがある)
#1で弾いている「Testify」です。
次に有名なのは「Lenny」と名付けられた一本でしょう。
これは当時の奥さんからプレゼントされたギターで、Lennyは奥さんの名前でもあります。
そしてプレゼントされたその日に「Lenny」という曲を作っています。
奥さんからプレゼントされたギターに奥さんの名前をつけ、またそのギターでもって奥さんに捧げる曲を作る。
いやー素晴らしい。
Lennyで弾いている「Lenny」はこちら。
「Testify」も「Lenny」も
前述の「Texas Flood」に収録されています。
また、アンプもFender社製を好んでいたようで。
ヴァイブロヴァーブやスーパーリヴァーブを使用しています。
そしてレイ・ヴォーンと言えばなんといっても使用エフェクター、Ibanez社のチューブスクリーマー。言わずと知れた名機ですね。
僕も持っていますよ、復刻版だけど(笑)
VOX製のWOWペダルもよく使っています。
アルバム「Soul To Soul」収録の「Say What!」という曲では
WOWペダルを二つ繋げてガムテープ?で固定して操作しています。
WOWが二つかかっているため強烈なサウンドです。
弦といい、機材といい、細部にこだわっていますね。
こだわりを持つことは良いことです。
しかし、レイ・ヴォーンが好きで、レイ・ヴォーンと同じ機材を揃え同じようなセッティングにしたとしても同じ音にはなりませんよ。
サウンドを決めるのは、最終的には「手」だからです。
表面的なことだけにとらわれるとモノマネで終わります。
ただ、真似をすることで自分なりの解釈というか
得るものがあるのなら、大いに真似しましょう。
最後に
ブルース一色のギタリストだと思われがちですが、Kenny Burrell(ケニー・バレル)やWes Montgomery(ウェス・モンゴメリー)など、ジャズギタリストからも影響を受けており、音楽性の深さを感じさせます。
彼の後継者をあえて考えるとすると誰だろう。
個人的にはJohn Mayer(ジョン・メイヤー)やPhilip Sayce(フィリップ・セイス)が思い浮かぶけど。
ジョン・メイヤーだとパワフルさと泥臭さが足りないし、
フィリップ・セイスだとちょっと暑苦しいんだよなぁ(笑)
どっちも好きだけど。
後にも先にもレイ・ヴォーンのようなギタリストはいないのかもしれません。
まさに唯一無二の存在です。
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